１１月４日 注：今日は清涼院流水著｢カーニバル・デイ｣のトリックについて書いてます
しかしたまにしか読まないんですが、最近のミステリを読むたびにいつも思うのはこのジャンルはつくづく異形進化しているな、ということです。 これが｢犯人当て謎解きクイズ｣であったら別に何の問題もないのですが、いちおう推理「小説」なわけですから、小説として読むと「いくらなんでも・・・」というさまざまなムチャし放題になってます。
たとえば新本格派の旗手といわれてるらしい（よく知らない）島田荘司の「斜め屋敷の犯罪」。 すべてが斜めに傾いた屋敷。それを建てた主人は一代で財を築き上げた大富豪にして天狗マニア。 もうこの設定だけで倒れそうです。 いくらこの設定がトリックに重要な関連があるからってムチャすぎですよ島田先生。
そしておなじみ清涼院流水。 もうこの人ぐらいになると「とにかくすべてがムチャクチャ」というところが楽しみなので、逆に筋の通ったものや、つじつまが合ったものを書いてしまうと読者の期待を裏切りますね。 で、今回の｢カーニバル・デイ｣もすごいですよ。 何しろ今回の事件は｢ビリオン・キラー」による「人類皆殺し｣ですから。 まさに６億倍にスケールアップした「そして誰もいなくなった」。 最後に残った奴が犯人だ。 まあ、それはいいとして、ビリオン・キラーが人類皆殺しのために起こす事件とは！
モアイ像が、ストーンヘンジが、ピサの斜塔が、自由の女神が、万里の長城が倒れる！ カッパドキアが燃え尽きる！ エッフェル塔が三段噴射して大爆発！ ボロブドゥール寺院の階段が一段増えてて転ぶ！ 大阪ドームがUFOとなって空を飛ぶ！ 空から白馬の騎士が降りてきて人々を血祭りに！ 大阪城が消える！ 川上から大きな桃が！（本当） 赤道上を大量の血液が流れて地球一周！ ベルリンの壁が消えたり現れたり！ Ｋ２が低くなる！ ムー大陸が浮上！ と思ったら沈んだ！ ネッシーが観光客に襲い掛かる！ シルクロード鉄道の線路がタイルに！（意味不明）
などなど、想像を絶する犯罪が！ まあしかし、どれも手間の割に人を殺せる数は少なそうですが。 かつて死ね死ね団が散々努力して日本人を殺してみたものの実は出生率の方が高かったというエピソードを思い出しますが、 そこはそれ、人類はとうとう半分以下になってしまいます。 さあ、どうするのか！ そしてついに暴かれたこれらの事件のトリックとは！
トリックとは！……それは｢２２世紀の科学｣でした。 ２２世紀の科学…、２２世紀の科学とはいったい……。 それは「２２世紀の科学だから当然いまの時点では説明できない、だから説明しない｣というもの。 このネコ型ロボットを欲しがる小学生のような理屈でみごと事件に幕。
あとすごいのは劇中でデビット・カッパーフィールドをもろに名指しで犯人扱いしてるところ。 ばれたら確実に訴えられるぞ。
１１月１５日
今日はジャッキー・チェン最新作「ＷＨＯ ＡＭ Ｉ？｣を観てきました。 しかしいまさら改めて言うのもなんですが、ポスター・チラシなどの宣伝材料が、 どうやってコードをくぐり抜けてきたのか不思議に思うほど世界人権宣言に対してアグレッシブなものになってます。 御存知ない方のために一応説明しておくと、ジャッキーがある種の民族の格好をしているというものなんですが。 ちょっと分かりづらいと思いますけど、いくら規制のないネット上とはいえ、きちんと適切な表現を心がけていかなくてはならないと思いますので、…そうですね、現住の方々、…いや、これも適切な表現とは言えません。 …土の方々、……いやいや、なかなか適切な表現というのは難しいですね。
まあとにかく、結構面白かったです。 いや、本当に。 ｢サイクロンＺ｣よりも全然面白かったですよ、ってよく分からん。 まあ、面白かったんですが、さすがにジャッキーも歳だなあ。 あとちょっとビッグになりすぎた。 このためどうしても「いい歳してアクション道楽のオッサンに、 悪者たちも仕方なく銃も使わずに付き合ってやってる」ようなニュアンスが出てきてしまうんですね。 これはなかなか難しい問題と思います。 ジャッキーもここらで次回作あたりからは自分の鼻を赤く塗ってさらにジジイ役に回ってみる、というのもひとつの手だと思うんですが、どうでしょうか。