平成16年

5月1日

少し前の話ですけど、いかりや長介が亡くなりましたね。で、その際寄せられたメンバーたちのコメントを見て、みなさん思われたことが「あれ？　ところで荒井注はもう死んでたっけ？｣ではないでしょうか。私も思った。まあ実際には荒井注は平成12年に亡くなってる訳ですが、その時にはそれなりに追悼したはずなのに、みんなもうそんなこと忘れてる。人の記憶なんて無情なものですよ。でも荒井注のカラオケ店のことはやはりみんな覚えてました。そうですね、荒井注が死んだことは忘れても、荒井注のカラオケ店にカラオケの機械が大きすぎて入らなかったことはみんな覚えてる、それも荒井注のひとつの愛され方かもしれません。

で、その長さんの遺作が｢恋人はスナイパー｣。そんな｢隣のヒットマン｣と松任谷由美を2秒ほどシェイクしてできたようなドラマの映画版が遺作になってしまうとは。しかも絶対にヒットしなさそうところがなんともまた。しかし確かに遺作というのは、オードリー・ヘップバーンの「オールウェイズ」や、ヒッチコックの「ファミリー・プロット」、スティーブ・マックイーンの「ハンター」など、別に悪いわけではないですが今までのキャリアを考えれば、「他になにかあっただろうに｣と思ってしまうものが多いです。しかしよりにもよってその作品が遺作になってしまう。人が死ぬということのままならなさとはそういうものかも知れませんが。

例えばあの松田優作の遺作がジョイナーと競演したテレビドラマであることは非常に有名な話です。最後の最後までどんな作品でもまじめにこなした、というのは役者として大変すばらしいことではあるでしょうが、当時このドラマ（ところでジョイナーの遺作もこれになるのか）を見た人誰しもが「こんな暇があったんだったら病院行ってくれよ！優作！｣と思ったこともまた事実。

そしてブルース・リー。遺作は｢死亡遊戯（’78）｣かと思いきや｢死亡の塔（’81）｣。まあこれは後からでっち上げられた映画なんで正確には違うんですが、そんなこと世間一般の人には分かりませんからね。｢ブルース・リー最後の映画はいつのまにかブルース・リーの弟が主役になってしまう上に塔も出てこないトンチキな映画｣だと思っている人も多いはず。これではブルース・リーも浮かばれません。

他にもオーソン・ウェルズも遺作がなんと｢トランスフォーマー｣ですよ。あの｢市民ケーン｣｢第三の男｣のオーソン・ウェルズがガキ向けマンガ映画に。まあ演じたのが地球よりもでかいロボットというところがまだオーソン・ウェルズぽいかも知れませんが。しかしまあこの人本当になんでもやる人だったんで、もしこれが遺作じゃなくても｢家出のドリッピー｣とかが遺作になったりしたんでしょうけど。

その他撮影中の事故なんかで死んだ場合は必然的にその映画が遺作になってしまいますね。ビック・モローの「トワイライトゾーン」や、ブランドン・リーの｢クロウ/飛翔伝説｣。スナッフの人は「スナッフ」。チャトランの遺作ってやっぱり｢子猫物語｣なのかな。ほかにも勝新の「座頭市」とか「東方見聞録」とか、撮影中の死亡事故というのは結構多いんですよね。役者の方にはなにかあったらそれが遺作になってしまう、ということを念頭においてぜひとも気をつけていただきたいものです。というか、それ以前にその映画がもし遺作になることがあってもいいのかどうか、出演される前によく考えていただきたい。人間ほんと何があるかわかりませんからね。「家に帰るまでが遠足」ではないですが、「次回作に出るまでは遺作」ですよ。あの三田佳子だって、遺作が「シベ超」になってしまう危険な時期が確かにあったんですよ。「しまった！　このまま死んだら…遺作が『ガンヘッド』に！」｢俺の人生最後のセリフ『ウパー！』かよ！！｣いまわの際にそんな思いをしてしまうようなことがないよう十分に考えていただきたいものです。　

11月30日

何年か前にも一度リメイクについて文章書いたことがあるんですが、しかしまさか世の中こんなにリメイクだらけになるとは。しかもリメイク元も邦画から洋画から漫画からアニメから絵本までまさに節操なし。どうしてこんなにリメイクばかりになってしまったのでしょうか。以前の文章の中では考えられるリメイクの理由として、

（1）ある程度の興収が予想できるから。

（2）往年の作品を観た世代が作り手になる年齢になったから。

というのを挙げたのですが、しかしひとつ肝心なのを忘れてました。それは

（3）めんどくさいから。　

今のリメイクだらけの理由はズバリこれではないでしょうか。みんなもう映画を一から考えたり作ったりするのも何もかもめんどくさくなってしまったのでは。たしかに考えてみれば映画が産まれてから早100年余、そらもういい加減倦怠期にもなるわ。

私も大概なめんどくさがりなのでその気持ちはよくわかります。だいたいこのページだって行と行との間を開けるのに本当だったらHTMLを勉強していろいろ指定して開けないといけないのに、めんどくさいので適当なところにスペースを挟み込んで強引に開けてるぐらいですよ。まあ、とにかくそんな風にやる気のない中、「めんどくさい、でも金が欲しい」「金が欲しい、でもめんどくさい」そんな気持ちで作られたのがリメイク作品なのではないでしょうか。いや、金のために映画を作るのは別にいいと思うんですよ。私もいまさら映画は作品だとかそんな青臭いことは言いません。芸術ぶって賞狙いのダラダラ長い映画を見せられるよりは「俺が欲しいのは…、お前の金だ！！（ブラッカイマー）」とズバリ言われたほうがはるかにスッキリしますよ。「黒人が出てても白人が出てても金を稼ぐのがいい映画だ」とザナックも言ってたしな。

しかしながら、その金を稼ぐには微妙な作品ばかりリメイクされているような気がします。もし私が力を持ったプロデューサーだったら恥も外聞もなく「タイタニック」をリメイクしますよ。ところが現実にリメイクされるのはどこに損益分岐点を見つけたのかもわからないような作品ばかり。いったいなぜなんでしょうか…って、言わずもがなですね。作るのさえめんどくさいのに、それが当たるかどうか真剣に考えるはずないですね。まあその気持ちもわかりますよ。まさかキャシャーンもハットリ君もヒットするとは。そらマーケティングの人も何もかもめんどくさくなって家帰って寝ますよ。

しかしこうしてめんどくさがって適当なリメイクばかりしてると心配なことがひとつあります。それはそのうちにリメイクのリメイクが登場してしまうのではないかということです。いや、こうやって手当たり次第にリメイクを繰り返してるといつか必ずその日が来ますよ。リメイクのリメイクといえばもはや3世代目、 3世代目といえば浴衣がアロハに、日本人がマルシアになってしまうのに十分な期間。映画の内容だって当然当初のものから大きく変わったものになってしまうはず。

「サンダーバード」は全員ガキのパイロットたちが出動してはドジばかり繰り返す話に。「ミニミニ大作戦」は別に普通の大きさの車が走り回る話に。「惑星ソラリス」はただ夫婦が別れ話をするだけの話に。「80日間世界一周」はとりあえずジャッキーが世界各国のビルを滑り降りる話に。「生きる」は愛の奇跡で病気が治る話に。「Shall　We　Dance？」は主役の男がハゲに（先祖がえり）。「デビルマン」はなぜか人形劇に。

しかしまあいろいろ書いてみましたが、実際に「デスレース2000年」がリメイクされるという現実の前には、何が起こっても驚かないですよ。と思っていたのですが、それにしても、「がんばれ！ベアーズ」までリメイクされるとは。しかしいまさらあんなのリメイクしたところで、いつもポテチばっかり食ってるデブを誰が演じるか、というところぐらいしか見所がないですよ。と思っていたところ、さらにあの「三丁目の夕日」までリメイクされるというではないですか。しかもタイトルは「ALWAYS　三丁目の夕日」に。とりあえず出演者全員ほっぺに綿詰めとけ。と思っていたところ、なんと、サム・ライミとブルース・キャンベルが組んで「死霊のはらわた」までリメイクするというではないですか。しかしブルース・キャンベル、お前の人生には「死霊のはらわた」以外ないのか!?

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